4.5 医者の不養生――産業組織心理学者がルールを守らないわけ
https://gyazo.com/68191fb0ef6228bb11f91bad178bccdb
進化心理学による産業組織心理学(I/O)への影響と変容についての研究や実践に興味 研究は主に三つの領域と関連
進化心理学の文脈から見た現代的な人材管理技術の利用
ヒトの進化的行動傾向とより一致させた人材管理技術の改変
組織(そして社会)変革における進化的ダイナミズムへの理解
主な研究成果に進化心理学と職場の融合の研究
その他、基礎研究関連の研究として、利他行動のコストや出生制限による利他行動への影響など 本文
組織は新たな方法をなかなか採用しない
経営者たちはあらゆる革新的な管理法やテクノロジーを真っ先に取り入れている
私たちの気づかないところで、多くの伝統的な人事手法には何らかの実用性があり、産業組織心理学のスタンダードな方法のうちいくつかは実用性に欠けているのではないか
キャンベルは、多くの社会的慣行は歴史の審判をくぐり抜けてきている分、新しい心理介入手法よりも有効性は確かだと主張している
私は進化理論、生物学、歴史学をバックグラウンドとしていたので、キャンベルの論文が組織心理学にとって重要なものであることをすんなり受け入れることができた ランダムな変異と選択的な維持による進化的変化は、人事手法の利用を理解するのに最適な方法だと私は思った 人事慣行は何らかの実用性がある(あった)ため、組織に存在している
社会―文化進化の観点からは、慣行はその組織の文脈において機能を果たしているがために用いられていると考えられる
同様に、(顔を突き合わせた付き合いがかなり必要とされる)上級職を雇う場合、標準的な試験よりも面接が用いられる
一般的に使われている8つの伝統的雇用法の平均妥当性係数($ .36)は、現代の8つの分析的手法の平均妥当性係数($ .35)とほとんど同じだった(Colarelli, 2003) 私の研究は、進化の過程で身につけた心理メカニズムが組織内での行動に及ぼす影響についての研究にシフトした
進化心理学的解釈を試みる研究
現在、ミスマッチの概念とそれが組織デザインに与える含意について研究している
ここでいうミスマッチとは、現代の組織のほとんどの側面が、進化が形成したヒトの心理や生理に合致していない、という発想
例えば、ヒトの身体的・精神的健康のためにはビタミンDが必要であり、ヒトは日光を直接浴びることでビタミンDを作ることができるが、現代の組織で働く人々は日光を浴びることがほとんどない 現在、進化心理学的な視点を備えた組織心理学者や経営学者は、依然として少数ながら、増えつつある
進化心理学者が進化心理学と他の心理学の分野との融合についてのレビューを書くときでさえ、産業組織心理学との関わりについて言及することはほとんどない(例えば、Fitzgerald & Whitaker, 2010)
ほとんどの産業組織心理学者・経営学者は、生物学あるいは進化心理学のバックグラウンドを備えていない
産業組織心理学や経営科学の主流派には、やや職業専門学校的な、応用や実践を重んじる傾向がある
彼らは、クルト・レヴィン(Kurt Lewin)が述べた優れた理論と現実との関わりについての洞察――優れた理論ほど実践的なものはない――を思い出す必要がある